C++20

[C++]メンバ型のトリビアル性を継承するロストテクノロジー

std::optionalやstd::variantは保持する型がトリビアルな型であれば、そのトリビアル性を継承することが規格によって求められており、その実装には非常に難解なテクニックが使用されます。しかし、C++20以降、このテクニックは過去のものとなり忘れ去られて…

[C++] std::formatあるいは{fmt}のコンパイル時フォーマット文字列チェックの魔術

コンパイル時フォーマット文字列チェック basic-format-stringクラス constevalコンストラクタ 実装例 応用例 参考文献 コンパイル時フォーマット文字列チェック {fmt}ライブラリおよび<format>には、コンパイル時のフォーマット文字列チェック機能が実装されていま</format>…

[C++]WG21月次提案文書を眺める(2021年05月)

文書の一覧 JTC1/SC22/WG21 - Papers 2021 mailing2021-05 全部で44本あり、SG22(C/C++相互互換性に関する研究グループ)のCの提案を除くと36本になります。 P0009R11 MDSPAN P0009R12 MDSPAN P0447R14 Introduction of std::colony to the standard librar…

[C++]C++20モジュールの変遷 - Module TSからC++20DISまで

C++20のモジュールは確かにある一つの提案がベースになっているのですが、その後C++20策定完了までの間に複数の提案やIssue報告によってそこそこ大きく変化しています。その結果、C++20のモジュールはその全体像を把握するためにどれか一つの提案を読めばわ…

[C++]TU-local Entityをexposureするのこと(禁止)

モジュールと内部リンケージ名 例 TU-local Entities? TU-local Entityの曝露(exposure) TU-local Entityを曝露してたら・・・ テンプレート 明示的インスタンス化 メンバ関数の暗黙inline さんぷるこーど モジュールにおけるinlineの意味 モジュールリン…

[C++]indirectly_writableコンセプトの謎の制約式の謎

std::indirectly_writableコンセプトはイテレータによる出力操作を定義するコンセプトで、std::output_iteratorコンセプトの中核部分を成しています。 template<class Out, class T> concept indirectly_writable = requires(Out&& o, T&& t) { *o = std::forward<T>(t); *std::forw</t></class>…

[C++]推論補助(deduction guide)にexportはいるの?

A : いりません 根拠 モジュールにおけるexport宣言は、そのモジュールのインターフェース単位でのみ行うことができます。export宣言は名前を導入するタイプの宣言の前にexportを付けることで行い、その名前に外部リンケージを与える以外は元の宣言と同じ効…

[C++] C++17イテレータ <=> C++20イテレータ != 0

これはC++ Advent Calendar 2020の24日めの記事です(大遅刻です、すいません)。 前回と前々回でC++20のイテレータは一味も二味も違うぜ!という事を語ったわけですが、具体的にどう違うのかを見てみようと思います。 iterator C++17 C++20 差異 input iter…

[C++]C++20からのiterator_traits事情

これはC++ Advent Calendar 2020の14日めの記事です。 C++20のiterator_traitsには、C++17以前のコードに対する互換レイヤとしての複雑な役割が与えられるようになります。従って、C++20からのイテレータ情報の問い合わせには前回説明したものを利用するよう…

[C++] C++20からのイテレータの素行調査方法

これはC++ Advent Calendar 2020の11日めの記事です。 これまでiterator_traitsを介して取得していたイテレータ情報は、C++20からはより簡易な手段を介して取得できるようになります。 特に、C++20以降はiterator_traitsを使わずにこれらのものを利用するこ…

[C++]inline名前空間の使途

inline名前空間はC++11から追加された機能で、その中にあるものは透過的に(名前空間がないかのように)アクセスすることができます。一見使いどころがなく見られがちですが、うまく使えばとても便利に活用することができます。 1. using namespaceの範囲を…

[C++]モジュールにおける所有権モデル

モジュールにおける所有権とは、名前付きモジュールに属しているエンティティの名前に関する所有権の事で、次のようなコードがどう振舞うかを決定するものです。 /// moduleA.ixx export module moduleA; export int munge(int a, int b) { return a + b; } …

[C++]Forwarding referenceとコンセプト定義

コンセプトを定義するとき、あるいはrequires節で制約式を書くとき、はたまたrequires式でローカルパラメータを使用するとき、その型パラメータがForwarding referenceから来ているものだと使用する際に少し迷う事があります。 // operator*による間接参照が…

[C++]カスタマイゼーションポイントオブジェクト(CPO)概論

C++20以降の必須教養となるであろうカスタマイゼーションポイントオブジェクトですが、その利便性の高さとは裏腹に理解が難しいものでもあります。これはその理解の一助となるべく私の頭の中の理解を書き出したメモ帳です。 C++17までのカスタマイゼーション…

[C++]モジュールとプリプロセス

C++20より使用可能になるはずのモジュールは3つの新しいキーワードを用いて記述されますが、それらのキーワードは必ずしも予約語ではなく、コンパイラによる涙ぐましい努力によって特殊な扱われ方をしています。 ディレクティブ導入トークン モジュールディ…

[C++]コンソール出力にchar8_t文字列を出力したい!

非Windows Windowsのコンソール出力と標準出力 標準IOストリームのモード コンソールのコードページ スクリーンバッファ 1. 素直に変換してstd::coutする 1.2 UTF-16に変換してstd::wcoutする 2. UTF-16に変換してWriteConsoleW()する 3. 標準出力をユニコー…

[C++]コンセプトの無言のお願い事

等しさの保持(equality preservation) 安定(stable) 定義域(domain) 制約式の引数に対しての制約 requires式とrequires節 暗黙的な式のバリエーション(implicit expression variations) コンセプトのモデルとなるために 参考文献 謝辞 等しさの保持…

[C++]std::common_referenceの概念

C++20より追加されたstd::common_reference<T, U>は型T, U両方から変換可能な共通の参照型を求めるメタ関数です。ただしその結果型は必ずしも参照型ではなかったりします。std::common_typeとの差など、存在理由がよく分からない物でもあります・・・ 同じ事を思う</t,>…

[C++]モジュールインポート時の動的初期化順序

ほぼほぼ、2019年12月のBelfast会議で採択されたP1874R1 Dynamic Initialization Order of Non-Local Variables in Modulesの和訳しただけです。 モジュールについては以前の記事でもご参照ください。 onihusube.hatenablog.com P1874R1前夜の大問題 P1874R1…

[C++] 集成体のテンプレート引数推論

C++17のテンプレートな集成体とテンプレートパラメータ推論 C++17から、クラステンプレートのコンストラクタ引数からそのテンプレート引数を推論出来るようになりました。これによって、クラステンプレートを扱う際にとても便利に書けます。 // std::vector<int> </int>…

[C++] std::rangesの範囲アクセス関数(オブジェクト)の使いみち

C++20のRangeライブラリ導入に伴って、std::ranges名前空間の下にbegin,end,size,data等の、これまでコンテナアクセスに用いられていた関数が追加されています。しかし、これらの関数はすでにstd名前空間に存在しており、一見すると同じ役割を持つものが重複…

[C++] [[nodiscard]]の言いたいこと

関数の戻り値に対するnodiscard 一番基本的な使い方です。この場合は単に戻り値を捨てないでね?という意思表示をし、それをコンパイラに通知してもらいます、そのままです。 [[nodiscard]] int f() { return 0; } int main() { f(); //コンパイラが警告を出…

[C++]コンセプトの文脈におけるmeet、satisfyとmodelの使い分けについて

この3つの言葉はどれも、あるコンセプトもしくは制約を満たすという意味で使われています。同じ意味のように思えますが標準ライブラリ中では明確な使い分けがなされています。 old conceptに対するmeet syntactic conceptに対するsatisfy semantic conceptに…

[C++]宇宙船演算子のフォールバック処理

宇宙船演算子の導入によって比較演算子の定義が著しく楽になります。ただ、テンプレートな所ではそう単純にはいかない事もあります。 template<typename T> struct wrap { T v; auto operator<=>(const wrap&) const = default; //Tが<=>を持っていなかったら? //Tが参</typename>…

[C++]コンセプトの5景

C++20にてついに導入されたコンセプト、書け方にムラがあるので少し整理してみます。 1. typenameの代わりに 2. 前置requires節 3. 後置requires節 ※関数のみ 4. autoによる簡略構文 ※関数のみ 5. 1と2(or 3) 4と3 全部盛り 参考文献 謝辞 1. typenameの代わ…

[C++]Deprecating volatile を見つめて

※この記事はC++20を相談しながら調べる会 #3の成果として書かれました。 C++20より、一部のvolatileの用法が非推奨化されます。提案文書は「Deprecating volatile」という壮大なタイトルなのでvolatileそのものが無くなるのかと思ってしまいますがそうではあ…

[C++]構造化束縛の動作モデルとラムダキャプチャ

一部のコンパイラでは構造化束縛宣言で導入された変数をラムダ式によってキャプチャすることができません。 実は、厳密に規格にのっとればC++17ならば出来ない、C++20からはできる、が正しい動作になります。 ただ、規格を眺めてもC++17でできず、C++20でき…

[C++]expression-equivalentのお気持ち

expression-equivalent?? 標準ライブラリへのRangeの導入に伴って新たに追加された言葉で、次のように定義されています。 expressions that all have the same effects, either are all potentially-throwing ([except.spec]) or are all not potentially-th…

[C++]constinit?🤔

constinit指定子 静的変数の初期化 定数初期化(constant initialization) 定数初期化コンストラクタ 動的初期化の静的初期化への切り替え constinitの効能 利用例 const一族 参考文献 constinit指定子 constinit指定子はC++20より変数に付けることができる…

[C++]モジュール理論 上級編(魔境編)

※この記事はC++20を相談しながら調べる会 #2の成果です。 ※この内容はC++20より有効なものです。C++20正式策定までの間に内容が変化する可能性があります。 importとmoduleというキーワード プリプロセッサの扱い マクロのエクスポート 名前が可視でなければ…